果里さんの歌声を、ぜひ聴いてみてほしいと思います。「言葉」が「曲」に乗って、果里さんの「声」を通して発せられた時、よぎるのは「言霊」という言葉。魂の宿った言葉は心の奥深いところにまで届くのです。
「♪忘れないで 今ここに 何故 僕らが 幸せに 暮らせている事を
忘れないで 持ちたくもない重たい銃を 背負い 戦った人達を」。
この『重たい銃』は、果里さんらしく平和を祈る1曲。
「この曲は私の母の幼い頃の体験を元に書きました。昔から母に幾度となく聞かされていた母の実兄が戦死した話。私の中で、遠い過去のような感じがしてどこか他人事でした。今年の2月、母はいつものように語りはじめました。母にしてみれば、お兄さんに可愛がってもらった幼少の時でお兄さんとの思い出は止まっていて、まるで昨日のことのように鮮明な記憶なんですね。今更ですが、「戦った人々がいたからこそ、今私たちが幸せに暮らせている」という事を忘れてはいけないな、戦争を知らない私達世代に伝えなければと思い、書いた作品なんです」。
「私ね。戦争映画なら、そこから何かに気づくことが出来たり、歴史を学ぶことができるかもしれないけれど、人を殺すようなゲームとかは、大嫌いなんです。そうしたものを多くの人が目にして、知らないうちにイメージの中に蓄積されていくと、それが現実になってしまうような気がして…。良くも悪くも、未来は私たちが思い描く通りになっていくと思うから、できるだけ良いイメージ、明るいビジョンを抱かせるものを目や耳にしてほしいと思うんですね。だから私自身、明日を信じられるような、今がどんなに辛くても、いつか上を向いて行けるようなそんなイメージを発信していきたいと思っています」。
「♪未来は全て あなたが描く 心の中次第
不安なんか 掻き消して自分をまず 愛そう」
このフレーズは『祈る』という曲に込められた果里さんからのメッセージ。果里さんの歌づくり、曲づくりにかけるコアな部分を表現している代表作です。果里さんの言葉には、ひとつひとつに重みがあって、どれもがなるほどと感じるものばかりです。
現在、ボイストレーナーとしての顔も持つ果里さん。教室には多くの生徒さんが通い、「発声」や「歌う」ことを通して、新しい自分、新しいステージへと挑戦をしているそうです。
「ボイトレを始めて、今10年目なんですが、年齢、性別を問わず、いろんな生徒さんが通われています。
声を出すのって、樹木に似ているとよく話しています。まず、しっかりした芯のある樹木があってこそ、枝葉は柔軟に風にそよぐことができますよね。樹木の芯に声を集めるというのかな?実は、声の出し方さえわかれば、皆さんできるようになるんです。もちろん人によっても、個人差はあるんですが、声の出し方ひとつで、仕事がとれるようになったという嬉しいお話もいただいているんですよ。それに、生徒さんと関わる中で、私が教わることも多いんです。ある生徒さんは、とても大きな夢を抱いていました。その夢は本当に素晴らしいものでしたが、正直大きすぎて「叶えるのは難しいかも…?」と半信半疑でした。でも、私は心のどこかで「最後は何が起こるか分からない」と応援してきたんです。するとですね……その生徒さんは、努力に努力を重ねて、見事に夢を叶えてしまったんです!私は、こういう仕事をしていて何なんですが(笑)、自分に“才能”はない、と思っているんです。何をするにしても「才能」があるに越したことはないけれど、たとえ「才能」と呼ばれるものがないとしても、続けていくことで「最後には何が起こるかわからない」んですよね。「継続は力なり」。諦めないこと、努力することの素晴らしさに、改めて気づかせてもらった瞬間でしたね」。
人は時に「才能」という言葉に逃げることがあります。「才能がないから、これ以上進めない」「才能がないから、諦める」というように。けれど、「努力」が「才能」を凌駕することはままあることです。さらに、地中の深いところに埋もれた「才能」という種は、「努力」という名の水を与えない限り、芽吹くことはないのかもしれません。果里さんの「最後には何が起こるかわからない」という言葉は、逃げることなく立ち向かってきた果里さんだからこそ力強く響くのです。
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